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2025.03.07
千倉の定置網漁を取材してきました!
南房総の漁業の柱の一つ「定置網漁」。
以前レポートした岩井の定置網漁に続き、今回は、南房総市の外房(太平洋)、東安房(ひがしあわ)漁業協同組合の千倉の定置網漁を取材する機会をいただきましたので、その様子をレポートします!
千倉の定置網漁
千倉の定置網漁は、沖網(おきあみ)と呼ぶ「白子漁場」、灘網(なだあみ)と呼ぶ「瀬戸漁場」の2個所の水深の違う漁場に大型の定置網を仕掛け、3艘の船を使って魚を獲るのが特徴です。
3艘の定置網船に乗る漁師さんの人数は総勢21名。出漁日は、漁師さんたちは白子漁港に集合し、そこから二手に分かれて、1艘が白子漁港から出港、もう2艘は、白子漁港から南側に車で約7分(約4km)移動し、水揚げを行う千倉漁港から出港します。

オレンジ色の朝焼けに包まれる3艘の千倉の定置網船、左から「第十八瀬戸丸」「三嶋丸」「第三千歳丸」。3艘の中で一番大型の「第十八瀬戸丸」は、2つのクレーンアームを搭載しているのが特徴です。
1.白子漁港集合 4時45分
取材日は令和7年1月18日(土)、早朝4時45分に白子漁港に集合です。気温は3度、北東の風が約5mとやや強めに吹き、体感温度は気温よりも低く感じます。
この日は19名の漁師さんたちで出漁です。
出漁前、船頭の渡辺さんは必ず白子漁港の食堂の神棚に漁の安全と豊漁を祈願します。

出漁前に白子漁港の食堂の神棚に漁の安全と豊漁を祈願する船頭の渡辺さん
2.出港 5時10分~
取材班は、3艘の中で一番大型の船、千倉漁港から出港する「第十八瀬戸丸」に乗船するため、車で白子漁港から千倉漁港に移動します。
そして5時10分、千倉漁港で「第十八瀬戸丸」に乗船し、もう1艘の「三嶋丸」と一緒に、夜明け前の真っ暗な海へ出港していきます。
外房の太平洋では、船が揺れることをある程度予想はしていましたが、この日は沖合に進むほど冷たい北風と波のうねりが強くなり、予想以上に「グワングワン」と船が揺れます。
漁場に向かう途中、筆者は船体に捕まっていないと立っていられませんでしたが、漁師さんたちはさすがです。「今日は揺れないほうですよ(笑)」と、どこにもつかまらずに涼し気な表情で甲板に立っている方も。
幸い筆者は船酔いには強い方ですが、果たして最後までこの揺れに耐えられるのか、取材の開始直後から不安になる揺れ具合です。

写真は千倉漁港から出港する2艘。左は筆者が乗船した「第十八瀬戸丸」。右が「三嶋丸」です。乗船すると直ぐに出港していきます。

沖合に進むほど冷たい北風が強くなり、波のうねりも高くなってきます。船体につかまっていないと立っていられず、写真のピントも合いません。
3.1つ目の漁場「白子漁場」に到着 5時30分~
千倉漁港の出港から約20分。1つ目の「白子漁場」に到着です。先に白子漁港から出港したもう1艘の「第三千歳丸」と作業を行います。
漁場に到着すると、揺れる船上にもかかわらず、漁師さんはそれぞれの持ち場につき、手際良く作業をこなしていきます。
ここから約20分かけて、2艘で網を挟みこむように揚げていきながら、網の一番奥に魚を追い込んでいきます。

カメラの手振れ補正機能のおかげで写真では伝わりませんが、漁場に到着した船上は前後左右上下あらゆる方向に大きく揺れています。

揺れる船上で漁師さんたちは手際よく持ち場の作業を始めます。「今日は揺れない方ですよ。もっと揺れる時は波をかぶりながら作業する日もありますよ(笑)」と漁師さん。

向かいの「第三千歳丸」と網を挟みこむように揚げていきながら、網の一番奥に魚を追い込んでいきます

網の中でどんどん魚を追い込んでいきます。
4.漁獲作業 5時50分~
いよいよ漁獲作業です。2艘をさらに寄せて網を囲むように引き揚げながら魚を1カ所に集めます。
網の中に集めた魚は大型のタモ網とクレーンで引き揚げ、船に備え付けの水槽に格納していきます。

クレーンも使って網を引き揚げます。

最後は漁師さんたちが手で網を引き揚げていくと、網の中に集めた大量の魚が見えてきました。

集めた魚を大型のタモ網とクレーンですくい揚げます。この作業を繰り返し、網の中の魚を向かいの「第三千歳丸」の船体の水槽に格納していきます。

網の中で威勢よく水しぶきを上げる魚の音、集まってくる大勢のウミネコの鳴き声、風と波の音、揺れる船上でクレーンや漁師さんたちが目まぐるしく動く現場の光景は迫力満点です。

船体に備え付けの水槽の上部は格子状の網目になっていて、大小の魚を選別できる仕組みになっています。

最後のひとすくい

1つ目の「白子漁場」の魚を獲り終えると、魚を積んだ相方の「第三千歳丸」はここでお別れ。「第三千歳丸」は水揚げのため千倉漁港に向かいます。そして、筆者が乗船した「第十八瀬戸丸」は2つ目の漁場「瀬戸漁場」に向かいます。
5.網の修理 6時15分~
この日はここでアクシデント発生です。
いつもなら直ぐに2つ目の「瀬戸漁場」に向かうところですが、魚を獲り終えた「白子漁場」の定置網に破れている箇所が見つかり、急遽その場で修理です。

網の修理箇所を確認する漁師さん

若手の漁師さんが技術習得も兼ねて網を修理します。

揺れる船上で器用に網を修理していきます。

網の修理作業の間に夜が明けてきました。
6.二つ目の漁場「瀬戸漁場」に到着 7:00~
無事に30分ほどで網の修理を終え、1つ目の「白子漁場」から15分ほど南下、2つ目の「瀬戸漁場」に到着です。
「瀬戸漁場」では、千倉漁港から一緒に出港した「三嶋丸」が先に到着して準備を進めています。
筆者の乗る「第十八瀬戸丸」が到着すると、直ぐに作業が始まりました。

この日は晴天ではありませんでしたが、雲の切れ目からの朝日がきれいでした。

2つ目の「瀬戸漁場」に到着です。千倉漁港から一緒に出港した「三嶋丸」が先に到着し準備しています。

ウミネコたちも整列して待ち構えています。

再び「瀬戸漁場」の網を引き揚げていきます。

手を挙げて作業の合図をする船頭の渡辺さん

網を引き揚げて魚を集めていきます。

網に集められた魚

2つ目の「瀬戸漁場」では、筆者の乗船した「第十八瀬戸丸」の水槽に魚を格納していきます。

この日の「瀬戸漁場」はアオリイカが大量です。

魚種によっては鮮度を保つため、その場で血抜き(活け絞め)を行います。

「かわいいでしょ!」とハリセンボンを手に取って見せてくれたお茶目な漁師さん
7.帰港 7:30~
2つの漁場の作業を終え、千倉漁港へ帰港します。

漁獲作業が終わり千倉漁港に帰港します。この日は終始大勢のウミネコが漁場と船の周りを飛んでいました。

帰港途中、甲板を洗浄する漁師さん

2つ目「瀬戸漁場」のパートナー「三嶋丸」と一緒に帰港です。

赤の灯台がシンボルの千倉漁港の入口です。
8.水揚げ 7:40~
千倉漁港に帰港すると直ぐに水揚げ作業です。港内全体が活気づき、休む間もなく漁師さんたちは手際よく魚を仕分けていきます。
船上で血抜き(活け絞め)した魚には、証拠のタグを付けていきます。
この日は、サバ、アジ、ブリ、メジマグロ、シマアジ、ヒラメ、イシダイ、ムツ、メジナ、アオリイカ、ヤガラなど、種類豊富な魚が獲れていました。
9.せり 8時00分~
万丈(バンジョウ)と呼ばれるカゴに魚が種類ごとに仕分けられ、計量器が用意されると、仲卸業者、水産加工業者、地元商店などの関係者が集まり、せりが始まります。せりが終わった魚は、氷を入れた樽に種類や大きさごとに仕分けられ、買い付けや出荷を待ちます。
10.終了~朝食 8時15分~
水揚げ作業が終わると、漁師さんたちは船の掃除や港の片付けを行い、船を元の停泊場所に戻し、朝の作業終了です。
作業終了後、漁師さんたちは車で千倉漁港から白子漁港に戻り、白子漁港の食堂で賄いの朝食をとります。
この日は土曜日で天候の都合もあり、定置網漁の仕事はここで終了でしたが、普段は正午前まで働き、漁具のメンテナンスや漁に必要な様々な準備などを行っているとのことでした。

千倉漁港での水揚げ作業が終わり、船は元の停泊場所に帰ります。
取材の最後に、船頭の渡辺吉洋(わたなべよしひろ)さんにお話をお伺いました。
「実は昨日までの3日間はマグロが獲れていたので、今日マグロを見せられなかったのがとても残念です(笑)。5月になればブリやワラサがたくさん獲れるので、その時期になったらまたぜひ取材に来てください(笑)」と笑みをこぼす船頭の渡辺吉洋さん。
南房総の魅力と言えば「海」。
今回は、その南房総の外房の太平洋から「海の幸」を届けてくれる要の仕事、千倉の定置網漁を取材させていただきました。
次回は5月頃、ブリやワラサが旬の時期にぜひ取材させてください!
ご協力いただきました皆さん、ありがとうございました!

黄金色のサンロードに照らされる千倉の定置網船「第十八瀬戸丸」
【関連リンク】
・南房総の海に生きる漁師の声と海で働く魅力 ~前編(内房編)~