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牧水奇譚

牧水もこの「青」をみていたのでしょうか?(白浜地区根本海岸)

 

「白鳥(しらとり)は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ」

明治・大正時代の歌人、若山牧水の代表作の一つとされるこの歌は、白浜地区根本海岸に縁があります。

明治40年12月27日、当時22歳の牧水は、謎多き恋人園田小枝子との旅行で根本海岸を訪れ、2週間ほど滞在したとされます。それまで宿泊旅行を頑なに拒否していた小枝子の態度軟化もあり、心の昂ぶりは最高潮に達していました。しかし何故か旅の舞台には、小枝子の従兄弟、赤坂庸三という同伴者がおり、この奇妙な三角関係は、牧水の胸中をより複雑なものとします。
悲哀、不安、歓喜、様々な感情に揺さぶられる旅の中、牧水の内面には、どのような空や海の「青(あを)」が映っていたのでしょうか?

「山を見よ 山に日は照る 海を見よ 海に日は照る いざ唇(くち)を君」

翌年の「新声」二月号では四十六首もの膨大な歌を発表しており、歌人若山牧水にとって、根本海岸への旅行は実り多いものとなりました。
残念ながら、五年に及んだ小枝子との関係は、明治44年、彼女の離京により終焉を迎え、そして晩年の牧水は借金やアルコール依存症に苦しみ、43歳という若さで逝去しますが、根本海岸での滞在期間中は、絶頂の瞬間を迎えていたといえるでしょう。

「安房の国 海にうかべり君とわれ 棲みてねむるに よき春の国」

年が明ければ、南房総地域に春が訪れます。
牧水の青春が詰まった根本海岸へ是非お越しください。

 

【関連リンク】
若山牧水歌碑について
※根本海岸の西側に牧水の歌碑が建てられています。