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「ウツボ」、食べたことありますか?

ウツボの季節到来!

 

「スカリ(釣りで使う網上の入れ物)に入れた獲物を食い荒らされた。」
「海沿いで魚を捌いていると、いつも血の匂いを嗅ぎつけてやってくる。」
「素潜り漁で噛みつかれた、ウエットスーツを食い破るほどの鋭さだった。」
「誤って釣り上げると、(噛みつかれないよう)釣針を取るのに億劫な気持ちになる。」

「海のギャング」という異名を持ち、鋭い牙で時には人に深手を負わせる、漁師・釣り人・マリンアクティビティ愛好家にとっては、悪夢のような存在、ウツボ。みなさんも海に行かれた際は、一度は意識したことがあるのではないでしょうか?

ウツボは、ウナギ目ウツボ科に分類、日本では太平洋側の黒潮が流れる海域に多く生息し、実は、伊豆・紀伊半島、四国、九州などの他、南房総地域の外房(太平洋側)エリアの一部で食用として扱われています(外房エリア出身の私は食べたことがありません)。

鋭い牙に厚い皮、小骨、そして独特の表皮のヌメリから、取り扱いの難しい食材。ヌメリ取りには、漁師の方から、塩揉みとタワシかけ、又は作業を省略するなら(タコやウツボ専用に使用する)洗濯機を用いると伺ったことがありますが、一般家庭には難易度がかなり高い。
今回は、手軽に買い求められるウツボの干物と、飲食店で提供されているメニューに挑戦してみました。

ウツボの捕獲や調理については、また別の機会にレポートしてみようと思います。

 

ウツボの干物(千倉地区千田「利左エ門:潮風王国内」)

様々な海産物加工品が並ぶ店頭、お客が絶えません

 

千倉地区、道の駅ちくら・潮風王国内に営業している利左エ門にやってきました。
利左エ門は、「うまいもの」にこだわり、海産物をオリジナルの手造りで加工する製造直販のお店で、くじら商品・さんま丸干し・各種干物などが店頭にズラリと並んでいます。
見つけました!「ウツボの干物」、店頭でもかなり目立っていますね。

「ウツボの干物は、12~3月頃の季節販売(冷凍)で、房総沖のウツボを千倉や館山の漁港経由で仕入れています。魚焼きグリルで焼いたり、唐揚げにして召し上がれます。小骨が気になる方は、キッチンバサミ等で小さめにカットして素揚げがオススメですよ。」

スタッフさんからいただいたレシピチラシを元に、自宅でウツボの干物を食べてみました。
冷蔵庫で解凍後(半日)、流水で汚れをサッと落とし、さらに熱湯で酸化した脂を洗い流します。キッチンペーパーで拭き取った後、骨が気になるので、キッチンバサミで小さくカット。さらに臭みを取り除くため酒を掛け、再びキッチンペーパーで拭ったら、片栗粉へ。素揚げでカリっと揚げたいので、ここで片栗粉は2回塗します。
180℃まで温度を上げた油へウツボを投入。皮目を上に向け、箸で叩いて固くなったらひっくり返し、中火で2~3分を目安に引き上げます。骨が気になる方は二度揚げをしてみましょう。

出来上がったウツボの素揚げ、美味しそう!

 

揚げ立てに塩を振って食べてみると、まるで脂の乗った白身魚のフライのようです。カリカリに揚がっているので、皮も香ばしく美味しく食べられ、とってもジューシー。これにはソースやマヨネーズ、タルタルソースも合いそう。骨の存在感が課題となるため、より細かいカットや、二度揚げなどの工夫を次回にチャレンジしてみたいですね。

 

ウツボ天丼(館山市相浜漁港「相浜亭」)

漁港の中に立地する「相浜亭」、取材当日は富士山も良く見えました

 

白浜地区根本近隣のエリア、館山市相浜は、冬季のウツボ漁が有名です。漁協直営で営業している「相浜亭」では、「ウツボ天丼(1~3月限定のみ)」を提供しています。他のメニューでは、「海鮮丼」、「キンメ煮付け定食」など、旬の地魚を活用した料理も展開しており、都心で注文したら2倍以上するのではないかという低価格のため、特に週末の昼時は大変混雑しています。

「毎年本格的な冬のシーズンに入ると、漁港近くに天日干しされたウツボが並びます。お店のウツボは、生のウツボを天ぷらにしており、コラーゲンたっぷりですよ。また海が時化るとウツボが獲れないので、心配な人は事前に電話確認してくださいね。」

待ちに待ったウツボ天丼、かなりの重量感です!

 

お店のスタッフさんから説明を受け、ウツボ天丼をいただきました。つみれ汁の肉団子もウツボで、まさにウツボづくしの一品です。
たんぱくな味わいや柔らかい食感はウナギ目に分類されるためか、ウナギに近い印象。一方でとにかく身が厚く、脂の乗りが良いことから、見た目を遥かに上回るボリューム感でした。またつみれ汁は細かくすり潰して処理されているので、小骨の心地よい感覚を楽しむことができます(自信のない方は少なめを注文するのがオススメ)。

食後は、あの「海のギャング」を食べてしまったなという達成感に満たされました。

 

海の食物連鎖で頂点に立つ「ウツボ」。「イセエビ」を捕食する「マダコ」は美味しいと言われますが、その「マダコ」をさらに餌にしているのが「ウツボ」です。野趣溢れる重厚な味わいの秘密はこうしたところにあるのかもしれません。

房総半島最南端エリアでは、この時期限定で食べることができますので、みなさんも是非お試しください!

 

※今回扱ったウツボは、「マウツボ」、「ホンウツボ」と呼ばれる種です。沖縄でみられる「ドクウツボ」は、食用ではあるものの特に大型個体はシガテラ毒(食物連鎖の頂点に立つ種に生物濃縮による毒が蓄積される現象)を持つ可能性があるため、ウツボを食用として扱う場合は、受傷のリスクも含め、十分にご注意ください。

 

【関連リンク】
FISHMART(利左エ門)ホームページ

館山漁業協同組合直営相浜亭チラシ