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給食はお米が主役。日本一おいしい給食を目指す南房総市の米飯給食への思い

南房総市の学校給食は「完全米飯給食」というのをご存じでしょうか?完全米飯給食とは、パンや麺類ではなく「ごはん」のみが主食の給食のこと。南房総市の子どもたちは毎日主食がごはんの学校給食を食べてスクスク育っています。
完全米飯給食で日本一おいしい給食を目指す南房総市の「食」への思いをご紹介します。

2011年からはじまった「完全米飯給食」

南房総市内の学校給食が完全米飯になったのは2011年4月。
「学校給食は食べることを学ぶ教育のひとつ」と考え、市内約2,300食の給食を内房(富浦・富山・三芳エリア)と外房(白浜・千倉・嶺南エリア)の二つの給食センター※でつくっています。
主役となるお米は100%南房総市産。2019年9月からは環境保全と食の安全・安心に配慮したこだわりのエコ米(ちばエコ農産物認証米)を導入しています。

写真左:房総のマッターホルン「伊予ヶ岳」のふもと近くにある「内房学校給食センター」
写真右:嶺南学園敷地内にある「外房学校給食センター」
※各子ども園(幼・保)の給食は自校式で調理しています。

 

南房総市が掲げる給食全体への理念は三つ。
1.大人が子どもに食べさせたい食
2.和食中心の献立
3.地産地消の推進

この理念のもと、南房総市では子どもたちの健康と健やかな身体と心の成長を見守っているのです。

 

ごはんにピッタリ!おかずの工夫と特徴

南房総市の給食理念の一つ目、「大人が子どもに食べさせたい食」とはどのようなものでしょうか?それは、安易に子どもたちが喜ぶ味の濃い単調なメニューではなく、子どもたちの健康を第一に考えたメニューのことです。現代社会では、油脂分が多い洋風の食事になりがち。そこで、給食理念の二つ目「和食中心の献立」です。南房総市ではごはんを中心にした油脂分の少ない野菜たっぷりの和食中心メニューで、子どものころだけでなく生涯の健康を守ることを考えています。給食で油を一滴も使わない日もあるのだとか。
ただし、ごはんとシンプルで淡白な和食だけというわけではなく、カレーなどのメニューや洋風・中華風の味付けもあり、子どもたちがおいしく給食を楽しめる工夫を南房総市ではたくさん盛り込んでいます。

南房総市ではこれまでに2冊の給食レシピ本を出版し、レシピ本の中には地域自慢の食材の紹介や生産者の方々の熱い思いがつまっています。

中でも、南房総市の給食のおいしさを支えるのは「だし」。市販のものは基本的に使用せず、カツオ、サバ、コンブを混合して一から手作りしています。和食ならではの「うまみ」は食材本来の味を引き立てるとともに、子どもたちの味覚形成にも役立っています。塩分が多くなりがちな和食メニューでも、だしをしっかり利かせて塩分を控えつつ深い味わいを生み出し、子どもも飽きずにおいしく食べることのできる給食を提供しているのです。

もちろん、他の味付けにも工夫が。味の重なりを避け、こってりした味付けとさっぱりした味付けを組み合わせ、一食の中で栄養バランスだけでなく味のバランスも心がけています。
さらに、ごはんと一緒におかずをよく噛んで食べることで、独特の味わいに。パンや麺類の場合は一品ずつ食べることが多くなってしまいますが、ごはんの場合はおかずも一緒に食べやすく、繊細な味わいを感じることができるので子どもの味覚を鍛えることにも役立ちます。

給食を食べる小学生(富山学園)

 

また、よく噛んで食べることができるのもごはん給食の特徴。南房総市ではご飯に加え、レンコンなどの根菜や豆、コンブなど噛み応えのあるおかず「カミカミメニュー」を用意しています。
よく噛んで食べることで、消化促進や虫歯予防、早食い、食べ過ぎ防止にもつながります。さらに、あごを動かすことで脳の血流が良くなって脳が活性化し、集中力アップや学習能率のアップも期待できるのです。

 

地域生産者とのかかわりを活かした「地産地消の推進」

海に囲まれ、温暖な気候に恵まれた南房総市は漁業・農業が盛んで、採れたての新鮮な食材が手に入りやすい場所です。その特徴を給食でも活かし、南房総で育った旬のおいしい魚や野菜を取り入れた「地産地消の推進」が三つ目の給食理念です。
その時期に採れた旬の魚や野菜はそもそも栄養価が高く、積極的に子どもに食べさせたい食材。しかも、地元生産者から直接仕入れるため鮮度もよく、おいしさも抜群です。

野菜は通年で約4割が南房総産。ほぼ毎日地域の生産者が直接給食センターへ野菜を届けてくれています。魚は、一般的に規格や衛生面で学校給食に取り入れるのは難しいといわれていますが、南房総市では市内の水産加工会社の協力で鮮度の良いおいしい魚を使うことができています。子どもたちが食べやすいよう、加工や味付けも工夫され、魚は人気メニューのひとつになっています。また、野菜農家も学校給食への食材提供に積極的。小さな子供でも食べやすいイボの少ないきゅうりを栽培して納入するケースもあるそうです。
このように、地元生産者との大きな協力関係があるのも南房総市の給食の大きな特徴であり、地域全体で子どもを育てたいという思いが感じられます。

ごはん給食の要のお米生産者の一人、(株)岡本農園代表取締役の岡本秀和さん(三芳地区)

 

「この地域に代々続く農家で、2011年に若い人の雇用を目的に法人化しました。女性でも重いものを運べるようにフォークリフトを導入したり、乾燥や選別などの作業を自動化したりして効率化を進め、次の世代にきちんとつなげることができる農業を目指しています。主にコシヒカリを含め8種類の米を作っています。学校給食には、「コシヒカリ」「つきあかり」、そして2021年の秋から「にじのきらめき」という品種を届けています。私も学校給食を食べていましたが、当時はどこで作られた米や野菜が使われているかなど考えもしませんでした。それが分かるというのは、親としてはとても安心です。地元の食材を使った給食を通じて、農業が子どもたちにとって「遠い」存在ではなく、将来の職業の一つと思ってもらえるとうれしいですね」

 

“子供は野菜作りのバロメーターです”と笑顔のみやこし農園の宮越敬二さん・加奈さん(富山地区)

 

「2017年に南房総市に移住し新規就農しました。最初は粘土質の土と、水が自由に使えない点に苦労しましたが、今ではキャベツやスイートコーン、ナバナなどを作っています。野菜ができたらまず我が子に食べてもらいます。子どもはとても正直で、おいしいとたくさん食べてくれます。自分たちが作った野菜が給食に使われることには、とてもやりがいを感じます。これからも、子どもたちがたくさん食べてくれる野菜を作りたいですね」

 

「南房総学」と給食

南房総市では、故郷への誇りと強い思いを育てるため「南房総学」という地域学習の取り組みを学校ごとに行っています。教育の一環である給食でももちろん「南房総学」に取り組み、地域の特色ある食材や調理法を積極的に採用しています。
その中でも南房総らしい食材といえば、クジラ。南房総市和田エリアには現在も捕鯨基地があり、クジラ漁は全国的にも有名。そこで水揚げされたクジラが南房総市の給食でも提供されます。

国内4か所の捕鯨基地の一つ、和田漁港で鯨の解体を見学する南房総市の小学生たち

 

クジラの水揚げ量にもよりますが、年に数回提供され、南房総市の伝統料理でもあるクジラの竜田揚げは子どもたちに大人気。
クジラ以外にも、全国的に知名度のある「房州ひじき」、「大葉わかめ」、南房総市北部で栽培が盛んなみかんをはじめとした柑橘類、冬場の早い時期から収穫される菜花なども給食に登場する南房総の代表的な食材です。
そして、南房総ならではの食材の情報は、献立表などを通じて給食センターからメッセージが伝えられ、給食を食べながら子どもも親も南房総についての学びを得ることができます。

さらに、学校の授業では、クジラの解体や牧場を見学したり、海産物を学んだり、畑や田んぼで農作物を育てる学習などの取組が「南房総学」として積極的に行われています。

 

給食を支える栄養教諭にお話を聞きました!

このような給食を支えるのは、給食センターのスタッフたち。中でも、メニューを考える栄養教諭の存在は欠かせません。今回は富山エリアにある内房給食センターの栄養教諭、岩崎恵さんにお話をうかがいました。

「南房総市は給食に力を入れているので、栄養教諭としてもチャレンジできることが多く、やりがいがあります。実は、これまでのパン食の給食はどうしても脂質が多くなってしまいがちで、栄養教諭としても悩みの種でした。南房総市が完全米飯給食に切り替わったことで、栄養バランスの良い献立が立てやすくなったなと思っています。子どもたちが夢をもって何かを目指して勉強やスポーツなどに取り組むとき、健康な体が大切。子どもたちが未来に向かってはばたけるよう、健康な体づくりを給食でサポートしてあげられたらと思い、毎日頑張っています」

岩崎栄養教諭

 

あとは、地産地消の取り組みとして、地元農家さんとのやり取りを大切にしています。新しい農家さんの情報が入ったら、直接うかがったりもしますね。野菜の生育状況にあわせて、献立を変更することもありますよ。農家さんも子どもたちが食べやすい品種の野菜を育ててくださるなど、学校給食への理解が深く、感謝しています」
「食事は全てに通ずるもので、特に子どもたちにとっては根っこになるものです。給食を教育のひとつと考え、これからも取り組んでいきたいと思います」

 

2016年からは学校給食の献立レシピを【クックパッド】で継続配信しています。

 

南房総の魅力が詰まっている南房総市の給食は、それ自体が南房総市の魅力でもあります。子どものことを本当に考えた完全米飯給食で育つ子どもたちの未来が楽しみです。

 

【関連リンク】

学校給食(南房総市HP)

 

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