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2023.07.18
2023年のツチクジラ漁がはじまりました!
日本で4カ所の沿岸捕鯨基地のうち、関東唯一の和田漁港を有する南房総市で、ツチクジラ漁が始まりました。
国内における捕鯨の歴史は古く、組織的な捕鯨の発祥は1606年の紀州太地浦(和歌山県太地町)とされます。ここで考案された古式捕鯨網取り法が土佐(高知県)や肥前(佐賀県)をはじめ各地に伝播します。
安房(南房総)エリアにおいては、1655年頃には勝山村(安房郡鋸南町)で船株組織「突組」が編成され、組織的捕鯨が行われていたとする記録が残っています。明治以降は西洋式捕鯨法が浸透し、1898年には新たに館山町(館山市)にて設立された房総遠洋漁業株式会社により、動力船を活用した捕鯨が稼働、舳先へ捕鯨砲を備付けてモリを打ち込むノルウェー式砲殺捕鯨法などによって操業範囲が拡大され、社名が東海漁業株式会社に改められてからは、拠点が乙浜村(南房総市白浜地区)、七浦村(南房総市千倉地区)へと変遷しつつ、1969年まで継続されました。
現在、南房総エリアでは、1949年に和田町(南房総市和田地区)に設立された外房(がいぼう)捕鯨株式会社が操業を続けています。
和田地区では、毎年ツチクジラが沿岸に回遊する夏季(6~9月)を中心に操業が行われ、捕鯨は夏の風物詩として地域に馴染まれています。
道の駅和田浦WA・O!では、郷土の鯨料理提供や鯨加工品販売のほか、敷地内でシロナガスクジラの全身骨格標本のレプリカ展示、世界中のクジラアイテムを収集した鯨資料館の開設をしており、週末を中心にこの鯨の街は賑わいます。
クジラの解体はいつ?外房捕鯨プレスリリースで確認しよう!
実は、和田地区で水揚げされたツチクジラは解体見学と鯨肉の現地購入ができます。
ただし、毎日水揚げされるわけではなく、年間26頭という限られた捕獲枠の中、波風などの海況や、音に敏感で海に深く潜るツチクジラの性質を見極めはじめて獲れる困難な事業です。
このツチクジラの捕獲情報については、シーズン中は外房捕鯨株式会社プレスリリースにてほぼ毎日情報が更新されます。解体見学(予約不要)をご希望される方はこちらで日程のご確認をお願いします。また、鯨肉ご購入希望の方は、クーラーボックスや発泡スチロールの箱などの入れ物をお忘れなく!
和田漁港での解体見学
沖合で鯨の捕獲がされると、肉の熟成のため海中で18時間ほど留置されます。
死後硬直を解き、柔らかい肉に仕上げるためや、郷土鯨肉加工品「クジラのタレ」の調理に適していると考えられているためです。したがって、刺身(生食)用としての消費には向いていません。
鯨が捕獲されると、おおむね翌日の早朝に和田漁港の外房捕鯨鯨解体作業場で解体が始まります。場内には安全対策のため立ち入ることはできませんが、川を隔てた対岸からは解体見学をすることができます。
解体では、分厚い脂肪層を剥がした後、背肉2枚、腹肉2枚及び胸肉1枚の言わば5枚おろしに切り分ける「荒解剖」と、それらの肉を商品販売するため小肉塊にする「肉作り」の作業が進められ、荒解剖では、薙刀のようなフォルムの大包丁を手際よく駆使する解剖員と、鯨体にかけたワイヤーをウインチで曳くワイヤーヒキとの絶妙な掛け合いが見学できます。
例年、その年初の水揚げには地元の小学生が見学会に招待され、捕鯨文化を学習するとともに、年に数回、市内の学校給食で鯨肉を活用したメニューが提供されます。
解体が始まれば、当然ながら鯨の血が流れ、内臓が露出しその腐敗臭が漂います。普段自分たちが口にする肉が、どのようなプロセスを経ているのかを、子供たちは学びます。
外房捕鯨株式会社社長・庄司義則さんは、これらの取り組みについて、
「現代は「食べ物はスーパーマーケットで売っているもの」といった感覚が一般的です。一方でその食べ物が具体的にどう生産されているか、全く見えない時代になっているとも言えそうです。そのプロセスを実際に自分の目で、独特な臭いが漂う中、夏の陽を浴びつつ、潮風に吹かれながら、見学すること。そこには教育上それなりの意味があるのではないかと実感しています。また捕鯨という仕事は、海洋に生息する大きな鯨を実際に捕獲するところから始まり、解体場にて「食材」に加工され、その後は流通機構を通じて、飲食店や各家庭にて調理されてようやく人々の胃に治まる。さらには鯨を愛護対象として、その捕獲に反対する人々は欧米を中心に結構多いが、彼らの国の大半はかつて膨大な鯨油の生産・供給によって大いに潤った歴史を有している。そういった意味でも学習の対象としての「捕鯨」は多様な可能性を有しているとも言えそうです。多様な知識を以て食品(例えば鯨)を食べれば、食べること自体がより豊かなものになるだろう。長年この仕事をしてきた中で、そんなことを考える様になりました。」
と語っています。
鯨肉の現地販売
鯨肉の現地販売開始は、漁港内係留場所から解体場所までの鯨体曳航、解体場での荒解剖、肉作りの各過程を経て、作業が始まってからおよそ3~4時間後になります。
販売が近づくと、
「今日の肉はいいかい?」
「いや、バリ(固い肉)だよ!」
などと地元の高齢者の声が聞こえてきます。
夏に帰省する子供や孫のため、良い肉を食べさせようと水揚げのたびに様子を見に来ているのでしょう。
この鯨肉、解体場現地販売以外にも、シーズン中は地元のスーパーなどに流通し購入することができますので、是非お手に取り、その美味しさをご堪能ください!
また、調理はちょっと苦手だなという方は、地元の飲食店でも鯨料理を召し上がれますので、是非お立ち寄りを!鯨産品もオススメですよ!
【関係リンク】
・外房捕鯨株式会社プレスリリース