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子どもを切れ目なく見守り育てる南房総の保幼小中一貫教育

子どもの感性に働きかける豊かな自然をもつ南房総市ですが、少子高齢化が進み、子どもの数は少ないのが現状です。その現状を踏まえ、子どもが少ないからこその教育に力を入れています。今回は、南房総市の教育の基礎となる15年間一貫教育と富山エリアの保幼小中一貫校「富山学園(とみやまがくえん)」について、ご紹介します。

15年間一貫教育への取り組み

15年一貫教育とは、出生時から義務教育の終わる15歳までの子どもを一貫して見守り育てる教育です。南房総市は子どもが少ないからこそ、子どもの育ちに関する情報と対応体制を一元化させ、切れ目のない子どもの成長を支え、個に応じた保育・教育の実施に取り組んでいます。

保育所と幼稚園(写真手前:一階建て)、小学校と中学校(写真奥:三階建て)が同一敷地内に併設する富山学園

 

2013年度には保育所・幼稚園に関する部署を教育委員会に移管。教育委員会の全部署をワンフロアに集約し、全体が見えるように棚などを低く設置。職員間の情報交換や交流がしやすく、職員の力がより発揮できる環境を整えました。

2017年度には、当時全国で初めての保育所・幼稚園と小中一貫校を同じ敷地内にした保幼小中一貫校・富山学園(とみやまがくえん)を開校。その2年後の2019年には、和田・丸山地区の3小学校、3幼稚園、2保育所と中学校をひとつにし、嶺南学園(れいなんがくえん)を開校しました。

内房(東京湾側)の富山学園の2年後、2019年度に外房(太平洋側)の丸山・和田地区の保幼小中一貫校として開校した嶺南学園

 

学園化により、保育所・幼稚園から中学卒業まで子どもたちを一貫して見守ることができるようになり、切れ目のないサポートをよりきめ細やかに実施できるようになりました。

 

情報共有と南房総学で9年間子どもを育む保幼小中一貫校・富山学園

南房総市で最初の保幼小中一貫校・富山学園では学園化の成果が見られています。

保育所と幼稚園、小学部(1~6年生)と中学部(7~9年生)の職員室を合同にしたことで、教員間の交流や情報交換が進みました。
また、お互いに授業を参観して指導を学びあったり、子どもの様子を観察したり、指導の工夫も行われています。実際に、子どものバックグラウンドなど数値情報では分からない部分も共有しやすく、学年が上がった後のケアも充実するようになりました。

教員間の交流や情報交換がスムーズな小中合同の職員室

 

富山学園の篠原準教諭に教員間の関係と子どもたちの様子を聞くと、
「職員室が小中合同で職員会議も一緒なのは個人的にはギャップを感じましたが、すぐに慣れました。子どもたちの指導に関して、意見交換がスムーズにできるなど小中の教員が一緒の場にいることのメリットはかなりあると感じています。子どもたちは中学部になっても小学部の時の教員が身近にいるので安心感があり、同学年のメンバーも学校も変わらないのでいわゆる『中1ギャップ』というのは少ないのではないかなと思います」

教室フロアは廊下スペースも広くとても開放的

 

「現在はコロナ禍で実施していないこともありますが、小学部と中学部の交流はかなり行われています。まず校舎が同じなので、行き来がしやすく、交流も自然とありますね。昼休みなどに、異学年の児童たちはもちろん、小学部の教員と中学部の児童が遊ぶ姿も見られます。それから、運動会や文化祭、避難訓練などは合同で、日常の掃除や委員会活動も合同なので、一緒になにかをする機会も多いです。そのおかげで、中学部の児童は思いやりを持っていて、小学部の模範となるよう行動も落ち着いているのではと感じます。児童同士も9年間一緒に学校生活を共にするので、同級生同士の絆が強いように思いますね」

また、富山学園では「南房総学」での体験活動に特に力を入れています。基本方針として「地域を学ぶ・地域に学ぶ・地域が学ぶ」をかかげ、実際に地域に触れて関わること、そしてつながることを大切に、地域資源を生かした教育課程の編成と実施が「社会に開かれた教育課程」につながることを目指し、小学1年生からカリキュラムを実施します。

大房岬での南房総学(マリンアクティビティ体験)

 

体験活動では、他者、社会、自然、環境の中で自分と向き合うことで、社会性や人間性、基礎的な体力や心身の健康、論理的思考の基礎を形成することを目的にしています。
2022年度の中学部の体験活動では、南房総を代表する山で富山エリアにある富山(とみさん)への登山や登山道の整備、大房自然公園での宿泊学習や森づくり、SUP・シーカヤック・コーステアリングといったマリンアクティビティ体験、地域を観光客にガイドする子どもガイド体験、茅葺屋根修復や味噌造りなどが実施されました。

「市も教育委員会も学校側の提案に協力的で、教育環境を提供する側としても風通しが良い学校だなと思います」と篠原教諭は笑顔で話してくれました。

学園内を案内していただいた篠原準教諭

 

南房総学を学ぶ子どもたちの声

2022年度に卒業を控えた富山学園9年生(中学部)に学校生活や南房総学について話を聞きました。

「学校で南房総学を学ぶことで、知らなかった地域の良さを知りました。今は富山の雰囲気が気に入っています。学校は中学部になってもメンバーが同じで、親しみが強いですね。卒業でみんなと離れてしまうのは少し寂しい気持ちもあります。あと、南房総は人口が減り続けているので心配だなと思っています」

「南房総学は自然を感じられるので好きなカリキュラムでした。将来は最終的には近くに住みたいなと思っています」

「もともとアウトドア派で、ひとりで自然の中に出かけることが多かったのですが、南房総学では自然の中でみんなと気持ちを共有したり、一緒に活動ができたので、楽しかったです。はじめての体験もたくさんありました。南房総は山も海もあるのに高速バスに乗れば東京にすぐ行けるところがいいです。将来は一度富山を離れるとは思いますが、地域貢献をしに戻ってきたいと思っています」

富山学園と将来について話してくれた9年生(中学部)の長谷川さんと佐野さんと原さん

 

子どもたちの育ちを考えてたどり着いた南房総の15年一貫教育。地域の資源を生かしながらたくさんの目で子どもたちを小さいころから見守り育む南房総の教育は、”最先端”といっても過言ではありません。

 

【関連リンク】

・特集記事「南房総に残っても、離れても、どこへ行っても」子どもの支えとなる郷土愛と学力を育む

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