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ワタシの移住の決め手
「生活と陶芸が、ひとつながりになった」
志村和晃さん(移住歴4年)の移住の決め手
家族構成(移住当時)
志村和晃さん(40)
/香織さん(41)
/うたさん(6)
/はるこさん(6)
/ちよさん(2)
移住歴:4年(2019年~)
移住エリア:
和晃さん 千葉県館山市→東京都→京都府→石川県→栃木県→千葉県船橋市→館山市→南房総市丸山エリア
香織さん 千葉県船橋市→館山市→南房総市丸山エリア
自分の道を進む上で、故郷を出ていろいろなことを学び、そしてまた親しみのある土地に戻る「Uターン」という移住の形があります。今回は、陶芸家として南房総地域内外で活躍する志村和晃さんにお話をうかがいました。
修業・独立を経て、南房総市に工房を移転
館山市出身の志村さんは、京都で陶芸の基礎を学び、石川県や焼き物の里として有名な栃木県益子にある工房で修業を経て独立しました。益子を離れた今も、毎年2回春と秋に開催される「陶器市」には、志村さんも出品しています。その他、南房総地域内外で個展や委託販売などを精力的に行っています。
陶芸作品や器作りには、大きな窯のある作業場が必要です。志村さんは独立後、まず益子から香織さんの実家に近い千葉県船橋市のマンションへ移りましたが、工房ができるような良い場所が見つからず、2014年に館山市の実家の物置を改装。そちらに工房を移転することにします。
香織さんは船橋から都内の仕事場へ行き、志村さんは週の月曜から金曜まで館山で作陶、そして土日は船橋に戻るなど、二拠点生活をしていました。
2017年、家族で館山の集合住宅へ移り、2019年に南房総市内に希望の物件が見つかったため、南房総市に移住しました。その物件は偶然にも陶芸用の電気窯と作業場があり、工房にするのにぴったりでした。そのため、2021年、館山にあった工房を南房総市の自宅の敷地内に移転することができたのです。
家族と一緒の時間、そして工房での仕事の時間。「生活と陶芸が、ひとつながりになった」と語る志村さんの姿が印象的でした。
自宅の前には木々や田畑が広がり、夏は蛍も現れます。隣近所もほどよく離れているため、窯の煙を心配することなく、静かな環境で作陶できるようになりました。
自然を感じる子育て環境、米飯給食もうれしい
香織さんは都内で、薬剤師のスキルを活かしコスメの品質管理の仕事をしていました。移住後も在宅で仕事を続け、現在は館山の薬局に勤めながら、前職の仲間とオーガニックシャンプーの開発に携わり、南房総の原料を紹介することもあるそうです。
今も月に1回のペースで都内に出ることがあるため、「都会ならではの活気と南房総の自然の豊かさを、移住したからこそ改めてそれぞれ新鮮に感じられる」と話してくれました。
「南房総市は米飯給食なのもうれしい」と話す香織さん。給食は100%南房総市産のお米で、生産者こだわりの「ちばエコ農産物認証米」を取り入れています。里・海・山の食材を生かした献立作りで地産地消を推進しています。
自宅の食事でも、とれたてのアジやサバ、イノシシ肉などをご近所さんからいただくことがあり、地元の新鮮な食材を使った料理が並ぶ日も珍しくありません。志村さん自身も自然の生き物を改めてよく見るようになったそうです。
家の中には、立派な薪ストーブが備え付けてあり、「ストーブの薪を確保しながら里山の整備につながれば」と考えています。
古き良きモノに学びながら現代の生活に馴染む、温もりある器作り
志村さんは主に食器を作陶しています。陶芸の世界にも時代の流れがあるようで、シンプルモダンな無地の器が多く出回っていた頃、「流行りのものに埋もれずに自分らしい器作りができないか」と模索していました。「せっかく京都や石川で修業したのだから、古くから伝わる絵付けの技術も取り入れてみては」とアドバイスを受け、少しずつ作品も変化していったそうです。
志村さんの器の特徴は、素朴な白地に呉須(ごす)という、あお色の顔料で描いた絵がそっとあしらわれているワンポイント。
アンティークや骨董が好きな志村さんは、その柄やモチーフからヒントを得ることも多く、西洋や中国のものなど、いろいろと見てきました。そして現代の生活に馴染むような絵付けをし、オリジナルの器に仕上げています。
工房に入ると、注文を受けたお皿やティーポット、コップなどがずらりと並んでいました。ガス窯を使っていて、現在は1か月に1回(約360枚)ほど焼いているそうです。
つながりを活かしイベントを企画
コロナ禍で陶器市やさまざまなイベントが中止になる中、志村さんは「小さくてもいいから自分たちの住む地域で何かできないか」と考えます。まずは野外で小規模にひらいてみようと、館山にある城山公園の広場を借り「awan market」を企画。はじめはひとりでもやる気でしたが、志村さんの意思に賛同した4人の仲間が集まり、2020年に第1回を開催しました。
つながりはゆるやかに広がっていき、今では出店者が10人に増えています。2023年の10月に6回目が開催され、お米やパン、コーヒーや植物などいろいろなお店が出て、にぎわいが生まれました。じっくりと見ながら買い物をしたり、会話をしたりと、「小規模だからこそ生まれる交流」もあるようです。
「地域おこしをしよう!」と気負わなくても、「出店者が楽しく続けていく中で、結果的にそうなっていけば」と志村さんは話します。
移住検討者へアドバイス
「実際に通いながら、その土地の解像度を上げていく」
最後に志村夫妻から移住検討者へのアドバイスをもらいました。 「良い物件があっても、実際に通ってみると想定よりも遠く感じたり、必要なお店がなかったりするので、気になる地域があるならまずは賃貸で住んでみるのがおすすめです。草刈りや神社の掃除に出てみると、近所の方と顔見知りになったり、生活の情報を得られたりします。地元の人や移住者、ユニークなコミュニティもあるので、関わり合いながら地域の解像度を上げていくといいと思います」 (本記事の内容は2023年取材当時のものです)